東大日次物価指数プロジェクト

English

東大日次物価指数に関するよくあるご質問

Q1:東大物価指数は誰がいつ開発しどういう目的で始めたものですか?

東大日次物価指数は,消費者物価を日々計測し,その結果を広く公開することを目的として,渡辺努(東京大学大学院経済学研究科)と渡辺広太(明治大学総合数理学部・東京大学大学院経済学研究科)が開発した指数です。2013年5月20日より東大のHPで公開されています。

Q2:東大物価指数では価格はどのように収集していますか?

日本経済新聞社が全国約300店舗のスーパーマーケットから収集したPOSデータを原データとして用いています。これを毎日集計して東大日次物価指数を作成します。更新は消費者が購買を行った翌々日に行われています。物価を測る公式統計としては総務省統計局が作成・公表する消費者物価指数(CPI)がありますが,これは月に一度の更新で,例えば4月分の数字が5月末に発表されます。これと比較すると東大指数のタイムラグは短いです。

POSデータとは,商品ごとの価格と数量を記録するシステム(POSシステム=販売時点情報管理システム)を通じて蓄積されたデータのことです。価格と数量の情報はスーパーのレジにあるスキャナーを通じて収集されるのでスキャナーデータと呼ばれることもあります。POSデータのひとつひとつのレコードは,ある店である日にある商品がいくらで何個売れたかを示しています。 2012年に300店舗のスーパーで販売された商品の種類数は約35万点で,レコード数は約4億件です。全サンプル期間(1988年から2013年まで)に販売された商品の種類数は約200万点で,レコード数は60億件です。

Q3:東大物価指数にはどんな商品の価格が含まれていますか?

東大指数の対象店舗は約300のスーパーマーケットで,対象商品はそこで販売されているほぼ全ての商品です。具体的には,食品,飲料,家庭用品などです。スーパーでは生鮮食料品も販売されていますが東大指数の対象商品ではありません。また,家電などの耐久消費財やサービスなどは東大指数の対象商品ではありません。物価に関する公式統計としては総務省統計局が作成・公表する消費者物価指数(CPI)がありますが,東大指数がカバーしているのはCPIの約17%です。東大物価指数にどのような品目が含まれるのか具体的には表1をご覧ください。
表1:東大日次物価指数に含まれる品目一覧

Q4:東大物価指数はどのように計算されていますか?

東大日次物価指数は,指数理論の分野でよく知られているトルンクビスト指数を日次データに適用することにより作成されています。ある商品のある日の価格とその商品の前年の同じ日における価格を用いてその商品の価格変化率を計算します。全ての商品についてこの価格変化率を計算した後で,それらの価格変化率を平均することにより,ある日の物価が前年の同じ日と比べてどのくらい上昇・下落したかを計算します。様々な商品の価格変化率の平均をとる際に,単純平均ではなく,加重平均を行います。ウエイトはその商品のその日の販売シェアと前年同日における販売シェアを足して2で割ったものです。このような加重平均を行うことにより,指数の精度を向上させることができます。また,消費者の実感により近い物価指数となります。なお,総務省統計局の作成・公表する消費者物価指数(CPI)では,品目の中でどの商品の価格を調べるか(例えば,バターという品目の中でどのメーカーのどの銘柄の価格を調べるか)を予め決めるという方法が採られています。つまり,調査対象となった商品はウエイトが1で,調査対象とならない商品はウエイトがゼロと予め決められています。

Q5:東大物価指数の算出における消費税の扱いについて教えてください。

東大物価指数は, 個々の商品について税抜価格を計算し,それをもとに算出されています。また, HP上に掲載されている「総務省指数(Q9を参照)」の算出においても, 消費税分を除いています。

Q6:東大物価指数は実質値上げ(価格を据え置きつつ商品の量を減らす)を考慮していますか?

商品の容量や重量を減少させ価格を据え置く行動を東大指数に反映させることは現状できていません。ただし,POSデータを用いて実質値上げを検出するという研究を行ったことがあり,実質値上げが2007年,2008年にかなりのインパクトをもったことを確認しました。詳しくは下記論文をご覧ください。 “Product Downsizing and Hidden Price Increases: Evidence from Japan’s Deflationary Period,” (S. Imai and T. Watanabe) Asian Economic Policy Review, Volume 9, Issue 1, 2014, 69–89.

Q7:東大物価指数にはどのような使い道がありますか?

東大物価指数は,高精度かつ高頻度の物価指数です。東大物価指数を用いることにより,景気や為替レートの変化,あるいは気候の変化など様々な要因が物価に影響を及ぼす様子をほぼリアルタイムで,しかも正確に観察できます。また,政府や日銀が行う経済政策がどのような効果をもつかをモニターできます。さらに,メーカーや流通業で自社製品の値決めをする際に,東大物価指数の品目別価格の動きを参考にするという利用法もあります。

日本では物価が徐々に低下するデフレが20年間続いています。現政権はデフレ脱却を最優先の課題と位置づけており,2013年4月には,消費者物価(CPI)の上昇率を2%まで高めるという目標が日銀によって示され,その実現のためにおカネの流通量を2倍にするという「量的・質的緩和政策」が始まりました。東大物価指数はデフレ終息を正確に検出する指標として用いることができます。また,過度な金融緩和が行き過ぎた物価上昇を引き起こすという懸念の声も聞かれますが,東大指数はそうした危険を早期に検知する上でも役に立ちます。

Q8:東大物価指数は過去にどのように変動しましたか?

図1は1989年4月から2013年6月までの期間の東大日次物価指数とそれに対応する月次指数を示しています。日次指数はボラティリティが非常に高いことがわかります。これは曜日の要因や特売の影響を反映しています。ボラティリティが高いと趨勢的な動きが見難くなります。ボラティリティを低下させるにはいくつかの方法がありますが,単純な方法は移動平均をとることです。東大物価指数のHPでは,何の加工も施さない日次物価前年比と,その7日間移動平均の両方を表示しています。

東大物価指数は高頻度なので価格の急変を的確に捉えることができます。これを例示するために図2では2011年3月11日に起きた東日本大震災前後の東大指数の動きを示しています。地震発生直前の時期には東大物価指数はマイナス0.7%程度でデフレを示していました。ところが,地震の発生に伴ってミネラルウォーターや食料,あるいはその他の生活必需品に対する需要が急速に高まる中,東大物価指数は約1.5%のプラスへと跳ね上がっています。

Q9:東大物価指数は総務省統計局の消費者物価指数と同じ動きをしていますか?

図3は,東大物価指数の月次版(赤線で表示)と総務省統計局の作成・公表する消費者物価指数(CPI,緑線で表示)を比較したものです。東大物価指数はスーパーで売っている商品(食品や日用雑貨など)の価格を集計したものです。一方,CPIはそれ以外の商品を幅広くカバーしています。図3では,両指数の対象商品の差を少なくするために,総務省統計局が発表している品目別価格指数の中から東大指数がカバーしているものだけを選び,それらを集計して指数を算出しています。HP上では,これを総務省指数と呼んでいます。図3からわかるように,片方の指数でインフレのときにはもう一方もインフレ,片方がデフレであれば他方もデフレというように,大きくみると同じ動きをしています。

しかし注意してみると,東大物価指数で計測した物価上昇率はCPIに比べて低く出る傾向があります。両者の差の平均をとると約0.5%です。この差はいくつかの理由で生じていると考えられますが,そのひとつは個々の商品の価格を集計する際の方法の違いです。東大指数では,個々の商品の価格変化率を集計する際に,それぞれの商品の販売シェアを重みとして加重平均を行っています(この方法は「トルンクビスト指数」と呼ばれています。詳しくはQ4とその回答をご覧下さい)。価格の下落している商品は販売シェアが高い傾向があるので,東大指数では価格下落に対しより大きな重みをつけながら加重平均することになります。その結果,東大指数はCPIに比べて低めに出ることになります。指数理論の研究成果によれば,個々の商品の価格変化率を集計する際に販売シェアを重みとして用いる方法(「トルンクビスト指数」)は,消費者の生計費を正確に計測する上で最も望ましい方法のひとつです。その意味で,東大指数が低すぎるのではなく,CPIが高すぎるとみるべきで,これはCPIの「上方バイアス」と呼ばれています。なお,同種の問題は日本以外の国で作成されているCPIにも,程度の差こそあれ,存在すると言われています。

Q10:売上高指数はどのように計算されていますか?

東大物価指数が対象としている約300の店舗の売上高を用いて前年と比べ売上高がどの程度変化したかを示す指標です。2014年7月7日からHP上で公開を始めました。なお,HP上の図では日次や月次の売上高指数を「経産省指数」と比較して表示しています。「経産省指数」は経済産業省が作成・公表している「商業動態統計調査」の「スーパー販売額(飲食料品)」の速・確報の値を用いています。

売上高指数と物価指数はともに約300の店舗のPOSデータから作成されるという意味で兄弟のような関係にありますがいくつかの大事な違いがあります。まず,物価指数は今日と比較時点(364日前)の両方の時点で存在している商品のみを対象として計算しています。つまり,364日前には存在したが今日は存在しない商品(マーケットから退出した商品)や364日前には存在しなかったが今日は存在する商品(新しく参入した商品)は計算の対象外です。売上高指数についても同じ扱いをすることはできますが,経済産業省が作成・公表している「スーパー販売額」などの商業販売統計はそうした扱いをしていません。退出商品の売上は比較時点の売上に含め,新規参入商品の売上は今日の売上に含めるという取扱いをしています。我々の作成する売上高指数もこの扱いを踏襲しています。また,今日と比較時点で存在する店舗が異なる(例えば,比較時点では存在した店舗が今日は存在しないなど)こともあります。売上高指数では2つの時点の両方で存在する店舗のみを計算の対象としています。この方法は経済産業省の商業販売統計では「既存店ベース」とよばれています。

Q11:売上高指数にはどのような使い道がありますか?

売上高指数は文字通り小売店における「売上金額」の変化を示すものですが,「売上金額」の変化は,「価格の変化」に起因する部分と, 「売上数量の変化」に起因する部分に分けて考える事ができます。前者は,東大物価指数の動きに相当する部分です。東大物価指数と売上高指数の両者を合わせることにより,経済の動きをより詳細に知ることができます。

例えば,東大物価指数が上昇したとして,それが需要の増加によるものなのか,それとも店舗やメーカーの価格設定が強気の価格設定に転じたためなのかを知りたいとします。前者であれば,売上高指数も上昇しているはずです。しかし後者であれば,売上高指数は低下しているかもしれません。つまり,店舗やメーカーは価格設定を強気化させているのですが消費者がそれについていっていません。このように物価指数と売上高指数を合わせることにより物価変動の原因を知ることができます。

Q12:ホームページ上で公開されている東大物価指数のデータをレポート等の中で利用する事はできますか?

このサイトのご利用については,非営利目的で使用する場合にかぎり,サイト上の文書を複製することができます。ただし、複製の際には『東大日次物価指数プロジェクトからの引用』である旨を明記して下さい。このサイト上に掲載されている文書及びその内容を営利目的で許可なく無断転載することは固くお断りします。なお,東大日次物価指数は誤差の小さい物価指標を目指して特定のデータを特定のアルゴリズムにより処理して作成した指数であり何らかの投資や経済取引などに利用されることを目的として作成されたものではありません。本指数の性質につき十分にご理解いただきご自身の責任により本指数をご使用ください。本指数に依拠して行った投資や取引などの結果ないしそれらにともなう損害についてはいっさいの責任を負いません。