*上図はアルゴリズムトレードによる損益分布の一例を示したもの
第1話 アルゴリズムトレードとHFTを混同していませんか?
- 1. HFTとは?
- HFTとは、High Frequency Tradeの略称で『コンピュータを使った金融市場での高速売買』の総称です。
- 1.1 HFTは何をもたらしているのか?
- 現在(執筆時:2013年)、金融市場では1000分の1秒(ミリ秒)単位で売買が執行されています。
- このミリ秒単位の高速処理は、人間の認識のレベルを超えています。さらには、コンピュータの情報伝達速度さえも超えている可能性があります。
- この状況は、市場が発信している情報が、自分のところに到達している時点で、すでに変わっているという結果をもたらします。
- すなわち、『HFTは金融市場での取引が不確実な情報による環境下で行わなければならない』ことを意味します。
- 1.2 HFTとアルゴリズムトレードの関係
- HFTを実施するためには、コンピュータによる執行が欠かせませんが、それは執行手順を具体化するプログラムが重要です。一方、アルゴリズムトレードは、市場データの分析をベースに作られるものであり、直接、HFTとは関係はありません。
- *執行が遅いアルゴリズムトレードは数多く存在します。
- すなわち、アルゴリズムトレードのすべてがHFTを前提にするものではないのです。
- 2. アルゴリズムトレードは必須か?
- アルゴリズムトレードとは、アルゴリズムによる金融市場での売買、すなわち、『コンピュータのよる自動売買』の総称です。
- 2.1 アルゴリズムトレードの本質
- わからない事とランダムな事は違います。市場の構造がわからないとき、それを「ランダム」と考えるか、「わからない」と捉えるかで、やり方は全く異なります。そこにアルゴリズム・トレードの本質があるのです。
- *ランダムは数式になりますが、わからないは数式にはなりません。
- 2.2 誤解されているアルゴリズムトレード
- アルゴリズムトレードには、コンピュータが欠かせません。コンピュータを使うと、作業の効率をとても高めることができるのですが、その一方で、コンピュータはプログラムされた通りにしか動きません。すなわち、効率を高めることには活用できても、アルゴリズムトレードを自動的に儲けられる道具にすることはできません。金融市場での儲けは「リスクをとったことの対価」であり、アルゴリズムトレードが収益を上げる可能性があるのであれば、それはリスクをとっているからです。リスクを含め「アルゴリズムが何とかしてくれる」と考えている人がいるならば、それは大きな誤解です。
- *もし、自動的に、必ず儲けが出せるのであれば、アルゴリズムトレードの提供者は、日本では贈与税を払わなければならないでしょう。
- 3. これまでの金融のリスクとは異なるリスク
- 金融工学は、値動きの激しさの度合いをリスクと定義しました。これは資産を選択するという業務においては、とても便利でした。ところが、タイミングを図るアルゴリズムトレードに対しては、これまでの金融リスクは必ずしも有効なリスク尺度になりません。
- <第2話へつづく>